「いくらで、いつまでに?」に固まる。最初の見積もりを工数と金額に分ける

作れそうなのに、金額と納期を聞かれると言葉が止まる。仕事を分けて工数の幅を見積もり、使える時間と費用、未確認の条件を整理して、相手と選べる見積もりへつなげる。

見積もりの返答を前に、開発者が作業時間とカレンダーを見比べて手を止め、金額を急いで約束しないよう考えるイラスト
ValueGate Blog

作れるかと聞かれた時は、すぐ答えられたのに

「それなら、いくらで、いつまでにできますか?」

その一言で頭が白くなること、ないだろうか。必要な画面も、使えそうな技術も浮かんでいる。実装なら何とかできる。でも、金額を高く言えば断られそうだし、低く言えば後で自分が苦しくなる。「たぶん二週間くらいで」と答えかけて、飲み込む😔

架空の相談を考えてみよう。小さな教室から、申込済みの人と入金・案内の状況を確認できる一覧を頼まれた。顧客の困りごとは聞けたが、今のデータ形式、使う人の権限、公開環境は未確認。エンジニアは「一覧画面なら早そう」と思っている。AIで画面の初稿を出せば、もっと短く済むかもしれない。

しかし、画面ができる時間と、仕事として使える状態へ届ける時間は同じではない。データの確認、権限、例外時の動き、利用者との確認、公開と説明も残っている。金額を口にする前に、何を終えたら今回の仕事が終わるのかを言葉にしたい。

最初の見積もりは、当てる金額を考えるより、仕事・時間・費用・未確認を分けるところから始める。 言い切れない部分があること自体は、見積もりの失敗ではない。その部分をどの条件で確かめるかまで示せれば、相手は次を選べる。

画面の数ではなく、終わらせる仕事を分ける

一覧画面一つ、と書くと、作業も一つに見える。けれど実際には、顧客の仕事を聞き直す、データの意味をそろえる、実装する、確認する、公開する、と違う種類の仕事がある。自分が不慣れな作業ほど見えないまま「実装」に入れ、後で夜の時間へ押し込んでしまいやすい。

まず、一区切りを説明できる大きさへ分ける。教室の例なら、次のような表から考えられる。時間は説明用の仮定で、標準工数でも相場でもない。

今回の仕事時間の仮の幅時間が変わる条件
現状の流れ・データ・完了条件を確認する4〜6時間サンプルと担当者の説明がそろうか
一覧と更新操作を作る8〜12時間既存の認証とデータ形式を使えるか
権限・入力ミス・主要操作を確認する5〜8時間利用者の種類と例外が増えるか
公開、説明、合意した修正を行う3〜6時間公開環境と確認担当が決まっているか
合計20〜32時間上の前提を確認して見直す

「この表で全部です」と急いで約束するのではなく、抜けを探すために使う。既存データの整備、外部サービスの審査、複数回の研修が要るなら、別の仕事として見積もる。確認や公開の時間も、実装が終わってから足すのではなく、最初から考える。

IPAの見積もり手法の資料では、成果物を分けて工数を積み上げる方法や、過去の似た仕事を基に考える方法が説明されている。2004〜2008年度事業のアーカイブであり、現在の単価を示す資料ではない。ここでは、仕事を分け、見積もった根拠を残す考え方を参考にしている。

自分の過去の記録があれば、今回との違いも一緒に見る。 同じ一覧でも、データが整っているか、誰が使うかで必要な確認は変わる。実績がなければ、全部を勘で一つの数字にせず、未確認の部分を小さく調べるか、守秘を確認して経験のある人へ相談する。自信を作るために数字を細かくするより、違いを説明できる方が役に立つ。

32時間の仕事を、4日で終えるとは約束しない

工数の幅が見えると、少し落ち着く。それでも納期を聞かれると、32時間なら一日8時間で4日、と言いたくなる。でも、他の仕事もあるし、顧客の確認を待つ時間もある。画面を開いている時間だけで、予定は埋まらない。

工数は自分が仕事へ使う時間。期間は、着手してから顧客と完了を確認するまでの経過日数だ。副業なら今週使える時間は限られるし、会社の仕事なら会議や別の担当業務もある。週12時間をこの案件へ使える場合、32時間の作業には、単純計算でも約2.7週分の枠が要る。そこへ確認待ちが入る可能性も見る。

教室には、こう伝えられる。

現在の前提では20〜32時間ほどの作業を見ています。この案件へ使えるのは週12時間です。データをいただく日と確認にかかる日数を合わせて、公開日を決めたいです。まず来週前半にデータを確認し、その後に日程を確定する進め方はどうでしょうか。

確認待ちを全部自分の工数へ入れるわけではないし、待ち時間を無視して納期を決めるわけでもない。相手が返すもの、返す日、止まった場合の再調整を分ける。日程が合わなければ、対象を一つのイベントだけへ絞る案や、既存の一覧で試す案も出せる。

働く時間と、完了までの日数を分けると、無理な予定を自分だけで引き受けにくくなる。 遅れが怖いから毎日空いていることにするより、使える時間を正直に示した方が、相手も順番を選びやすい。

金額は、時間の計算と引き受ける条件を一緒に見る

金額を考える時、「自分にそんな値段を付けていいのか」と感じるかもしれない。けれど、まず計算したいのは人間としての価値ではなく、その仕事を続けられる費用だ。時間当たりの計算額を考えるなら、生活や事業に必要な費用、営業・経理・学習など請求できない時間、案件に使える時間を確認する。希望する月収を、そのまま全勤務時間で割れば十分とは限らない。

計算の形を説明するため、ここでは時間当たり5,000円、作業20〜32時間、今回必要な外部費用1万円と仮定する。これは市場相場や推奨価格ではない。

  • 20時間 × 5,000円 + 1万円 = 11万円
  • 32時間 × 5,000円 + 1万円 = 17万円

この11〜17万円は、仮定から出した試算の幅だ。そのまま請求額が決まるわけではない。固定金額で引き受けるのか、合意した時間に応じて精算するのか。変更時の扱い、確認責任、継続費用の負担も相談する。税を含むか、毎月のサービス利用料が別かも、見積書で分ける。

固定金額にする場合は、見積もった範囲と不確かさを踏まえて、引き受けられる金額を提示する。時間精算なら、上限と、上限へ近づく前に相談する方法を合意する。「時間は増えるかもしれません」だけで請求額を増やしたり、後から黙って変更したりしない。

金額の根拠を持つことと、顧客がその条件を選ぶことは別だ。 予算が足りない時は、自分の確認作業を見えなくするより、範囲・時期・方法を変える案を出す。安く引き受けるなら、何を変えた結果なのかを自分も相手も説明できるようにする。

分からない部分は、調べる仕事と再見積もりへ分ける

教室の一覧は見積もれそうだ。でも、入金データを今のサービスから取れるかは分からない。ここを怖くなって大きな予備費へ隠すと、相手には理由が伝わらない。逆に、取れるはず、と無料で引き受けると、調査だけで予定を使い切るかもしれない。

まず、どの不確かさが金額や納期を大きく変えるかを一つ挙げる。その確認を別の小さな仕事にできないか考える。

データを出力できるかが未確認なので、連携部分の固定金額はまだ出せません。最初に提供いただいたサンプルと設定を確認し、使える方法と次の見積もりを返す範囲を相談したいです。調査の上限時間、費用、扱える情報、返す日を先に決めませんか。

調査費用の有無や上限は実施前に合意する。調べれば必ず実装できる、という約束も足さない。前提が違った時の再見積もり条件を残しておけば、追加金額を一方的に告げるのではなく、確認した事実から次の範囲を選び直せる。

AIに作業候補や抜けを出してもらうのは助けになる。ただし、AIの「三日でできます」は、自分の環境や顧客の確認時間を測った結果とは限らない。AIの見積もりも候補として受け取り、仕事と前提に戻して確認する。 初稿が速いことだけで、検証や説明の費用をゼロにしない。

今日、見積書より先に埋める四つの欄

最後に金額を一つ出せないと、見積もりを逃げている気がするかもしれない。でも、知らないことまで知っている顔をして約束する必要はない。範囲と試算、未確認と確定する日を示せれば、相手は待つ、範囲を変える、先に調査を頼む、と選べる。

今日一つ試すなら、手元の相談を四つに分けよう📝

  1. 今回終わらせる仕事を、実装・確認・公開を含めて書く。
  2. 仕事ごとの時間の幅と、自分が使える時間を書く。
  3. 計算に使う金額と外部費用、含めない継続費用を分ける。
  4. 金額や納期を変えそうな未確認を一つ挙げ、確認する方法と日を決める。

提案の伝え方は相手が判断できる順番、範囲の書き方は一式の見積りを分ける方法、完了の約束は着手前の三つの基準、支払いは着手前に確認する条件で具体化できる。

見積もりは、自信のある数字を言う場ではなく、何をどの条件で引き受けるかを一緒に決める場だ。 まず、知っている仕事と、まだ確かめたい仕事を分ける。そこまで書ければ、次の「いくらで?」へ返す言葉は少し具体的になる🙂

参考にした情報

Next Step

次にやることを決める

今回含めること、含めないこと、変更時に相談することを三つに分けて書く。

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