単価の上げ方 公開: 2026/2/28 更新: 2026/7/14

「少し安くできませんか?」にどう返す? 受託案件の価格を守る3つの提案

受託案件の見積り後に予算調整を求められた時、金額だけを下げず、範囲、納期、責任を組み替えて返す3つの方法を整理する。

会議室で受託案件の予算相談を前に、見積り条件を守る返し方を考えているエンジニア
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「少し安くできませんか?」にどう返す? 受託案件の価格を守る3つの提案

見積りを送った翌日、予算の相談が返ってきた

受託開発の新しい案件で、管理画面の改修を相談された。打ち合わせで必要な機能と納期を聞き、実装、確認対応、修正1回を含めて30万円の見積りを送る。

翌日、担当者からこんな返信が来る。

「社内で確認したところ、予算は25万円まででした。少し調整できませんか」

まだ契約前だ。相手は案件を進めたい。ただ、同じ機能と納期のまま、5万円だけ下げられないかと相談している。画面を見たまま、手が止まること、ない?

これは、稼働中の月額単価を下げる話ではない。受託案件の発注前に、見積り金額を調整できないか相談される場面だ。まだ発注前なので、作る範囲や納期を組み替える余地がある。

強く断りたいわけではない。相手の事情も分かる。今回は関係を切りたくないし、できれば前に進めたい。でも、そのまま金額だけ下げると、納期も範囲も修正回数も責任も全部そのまま残りそうな気がする。

正直、かなりしんどい😓

ここでつらいのは、値下げの金額だけではない。自分の中で「何を守りたいのか」が一気に混ざることだ。見積り額を守りたいのか、短納期を避けたいのか、追加修正を別枠にしたいのか、リリース後の問い合わせ対応まで抱えたくないのか。全部が頭の中で重なって、返事が書けなくなる。

その結果、返し方が二択になりやすい。

  • その条件では難しいです、と断る
  • 分かりました、と金額だけ下げる

でも、実務ではその間にもう一つある。代替提案は、断るための言葉ではなく、条件を組み替えて前に進めるための言葉 だ。

たとえば、金額は守る代わりに範囲を絞る。予算に合わせる代わりに納期を延ばす。初回納品までは含めるが、運用後の問い合わせは別枠にする。相手がほしい結果を残しながら、自分が壊れない条件へ戻す。

この記事では、見積り後の予算相談に対して、金額だけを下げずに返す代替提案の作り方を整理する。強い交渉術ではない。返信をあと回しにしたくなる前に、返事を一つ作れる状態にする話だ。

代替提案は「値引き拒否」ではなく、条件の確認から始まる

代替提案を作る前に、まず見るものがある。契約書、発注書、見積書、メール、チャット。そこに何が書かれているかだ。

ここを飛ばして「どう言えば角が立たないか」から考えると、返事がふわっとする。相手に配慮しているようで、実は自分の条件も相手の希望も整理できていない。まずは、今の依頼がどの条件に触っているのかを見る。

見るのは、難しい法律論からではない。まずは手元の事実だ。

  • 金額はいくらで合意しているか
  • どこまでが成果物に入っているか
  • 納期や確認日はいつか
  • 修正回数や追加対応の扱いは書かれているか
  • リリース後や運用後の対応は含まれているか

この5つを見ただけでも、返し方は変わる。まだ契約前の相談なら、条件を組み替える話にできる。すでに発注済み、作業済み、納品済みなら、あとから金額や範囲を変える話になる。ここは同じ「値下げ」でも、かなり違う。

事前の相談と、あとからの減額は分ける

まだ契約前なら、「その予算ならこの範囲で進める」が言いやすい。相手も検討中なので、範囲、納期、優先度を動かせる余地がある。

一方で、すでに合意したあとに「やっぱり下げたい」と言われた場合は、別物だ。公正取引委員会などが公開しているフリーランス法の資料では、取引条件の明示や報酬の減額、買いたたきなどが整理されている。ここで言う報酬の減額は、決めた報酬額をあとから減らすような話だ。個別に法律がどう当てはまるかは案件によるが、実務上も「最初の条件相談」と「あとからの減額」を混ぜない方がいい。

難しい制度名を先に出す必要はない。まずはこう分ける。

これは、これから条件を調整する話なのか。

それとも、すでに決めた条件をあとから変える話なのか。

この一線が見えるだけで、返事の温度が変わる。前者なら代替案を出す。後者なら、合意済みの内容、作業状況、追加変更の扱いを確認する。同じ値下げ依頼でも、いつ来た話かで返す順番は変わる。

価格だけを見ると、相手も選べない

価格の話は、数字だけで見るほど詰まる。「10万円を8万円にできるか」と聞かれると、こちらも「できる、できない」で返したくなる。でも本当は、その10万円にはいろいろ入っている。

調査、設計、実装、レビュー、打ち合わせ、修正、説明、リリース前確認。小さな案件でも、価格は作業時間だけではできていない。あとから揉めないための余白も入っている。

中小企業庁の価格交渉ハンドブックでも、価格交渉では業務内容、見積りの根拠、不確定要素などを整理することが扱われている。企業間取引向けの資料なので、小規模な受託案件にそのまま当てはまるとは限らない。ただ、「価格だけを切り出さず、何に対する価格かを見える形にする」という考え方は、受託の見積り調整でもかなり使える。

相手も、ただ数字だけを見せられると選びにくい。「この金額は難しいです」と言われても、どう変えればよいか分からない。だから代替提案では、価格の前に中身を分ける。ここが最初の仕事だ。

作る順番は、守るもの、動かせるもの、返す一文

代替提案は、きれいな営業トークから作らなくていい。むしろ、いきなり文面を作ると弱くなる。先に中身を分ける。

順番はシンプルだ。

  1. 守るものを決める
  2. 動かせるものを出す
  3. 返す一文にする

この順番なら、相手に合わせすぎて全部を飲み込むことも、強く断りすぎて会話を止めることも減らせる。

まず、守るものを一つに絞る

値下げ依頼が来た時に、全部を守ろうとすると返事が重くなる。金額も守りたい。納期も守りたい。範囲も守りたい。責任も広げたくない。分かる。全部大事だ。

でも、最初の返事では一つに絞った方がいい。

たとえば、今回どうしても守りたいのが見積り額なら、金額はそのままにして範囲や納期を動かす。どうしても関係を続けたいなら、金額を少し合わせる代わりに、今回限りの範囲や修正回数を明記する。短納期が一番しんどいなら、金額より先にスケジュールを動かす。

ここを決めると、返事が急に書きやすくなる。

今回守りたいのは、金額なのか。

それとも、納期、範囲、責任のどれなのか。

この問いを飛ばすと、相手の「少しだけ」に全部吸い込まれる。「少しだけ安く」「少しだけ急ぎで」「少しだけ修正も見て」。少しだけが積み上がると、まあまあ大きい。いや、普通に大きい🫠

守るものを一つ決めるから、譲るものも選べる。 ここが代替提案の芯になる。

次に、動かせるものを3つ出す

守るものが決まったら、動かせるものを出す。おすすめは、範囲、納期、責任の3つだ。

範囲を動かすなら、成果物を絞る。初回版だけ、必須機能だけ、調査メモだけ、改善提案は別枠。納期を動かすなら、急ぎ対応を外す。今月中ではなく来月前半、優先度を下げて通常枠、確認待ち期間を別で置く。責任を動かすなら、修正回数、問い合わせ対応、リリース後の確認、運用保守を分ける。

ここで大事なのは、曖昧にしないことだ。

「簡易対応にします」だと、あとでまた揉める。相手は簡易のつもりでも、こちらが想像する簡易と違うかもしれない。だから、なるべく目で見える形にする。

  • 管理画面の詳細検索は次フェーズに回す
  • 修正は1回まで含める
  • 打ち合わせは月2回までにする
  • リリース後の問い合わせ対応は別見積りにする
  • 発注側で素材と文言を先に用意してもらう

こうなると、相手も選びやすい。価格の話が、「高いか安いか」から「何を残して何を外すか」に変わる。

代案は、最初は1つでいい

代替提案という言葉を聞くと、3案くらい出さないといけない気がする。でも、最初から複数案を並べる必要はない。むしろ、迷っている時に3案も出すと、自分も相手も散る。

まずは一案でいい。

ご予算に合わせるなら、今回は初期版の実装までに絞るのが現実的です。

追加の改善提案とリリース後対応は、別途見積りに分けたいです。

これだけでも、かなり違う。値下げに応じるとも、拒否するとも言い切っていない。相手の予算を受け止めながら、条件を戻している。

代案は、きれいな企画書ではなく、会話を止めないための仮説だ。相手が「それだと困る」と言ったら、次に納期を動かす案を出せばいい。最初の一通で勝負を決めなくていい。

その場で使うなら、3つの型に分ける

ここからは、実際の返し方に落とす。値下げや厳しい条件の相談に対しては、だいたい3つの型で返せる。

予算を優先するなら、範囲を小さくする

一番使いやすいのは、予算に合わせて範囲を絞る型だ。

ご予算感は理解しました。

その金額に合わせる場合、今回は初回リリースに必要な範囲までに絞るのがよさそうです。詳細検索、追加レポート、リリース後の改善提案は次フェーズとして分けたいです。

この返し方のいいところは、相手の事情を受け止めていることだ。「無理です」で止めていない。でも、金額だけ下げてもいない。

ポイントは、「何を外すか」まで書くこと。ここを書かないと、相手は同じ成果を安くできると思ってしまう。予算を優先するなら、範囲も一緒に小さくする。これを自然に置く。

納期を優先するなら、金額と範囲は守る

相手が本当に困っているのが予算ではなく納期なら、返し方は変わる。急ぎで必要なら、金額を下げるより、優先対応の前提を確認した方がいい。

納期を優先する場合は、今回の見積り範囲と金額のまま進めたいです。

ご予算を優先する場合は、納期を通常枠に戻すか、初回対応範囲を絞る形で調整できます。

急ぎ対応には見えないコストがある。予定を動かす、他の仕事を調整する、確認待ちの時間を抱える、夜や休日に見る。ここを無料で吸収すると、次からも「急ぎだけど同じ金額」が残りやすい。

急ぎなら金額を守る。予算なら納期か範囲を動かす。相手が何を優先したいのかを選べる形にする。 これが、対立になりにくい返し方だ。

関係を続けたいなら、今回限りだと残す

関係性として、今回は少し合わせたい場面もある。新しい相手、継続見込みがある相手、これから伸ばしたい領域。そういう判断で調整すること自体は悪くない。

ただし、記録なしの値下げは危ない。次回の標準価格になりやすいからだ。

今回は初回の進め方確認を兼ねて、この範囲に限り調整します。

次回以降、同じ範囲で進める場合は通常見積りに戻したいです。

この一文があるだけで、かなり違う。相手に悪気がなくても、「前回と同じで」と言われることはある。その時に、「前回は初回限定の条件でした」と戻れる。

これは冷たい話ではない。むしろ、関係を続けるために必要な線引きだ。毎回なんとなく安くすると、どこかでしんどくなる。続けたい相手ほど、特別対応は特別対応として残しておく。

返事を書く前に、確認先を一つだけ決める

代替提案を出す時、もう一つだけやっておきたい。誰に確認してもらうかを決めることだ。

値下げ依頼を送ってきた担当者が、最終判断者とは限らない。担当者は予算上限を伝えているだけで、範囲を削れるか、納期を動かせるか、社内承認を取れるかは別の人が持っていることもある。

だから、返事の最後に確認先を置く。

どの案が現実的か、予算と優先範囲を確認できる方も含めて見ていただけますか。

または、もっと短くてもいい。

ご予算を優先するか、納期を優先するか、社内で確認いただけると次の案を固めやすいです。

これだけで、会話が少し前に進む。自分が全部を背負って答えを出すのではなく、相手にも選んでもらう形になる。

最後に、返事の型をひとつ置いておく。

ご相談ありがとうございます。

ご予算感は理解しました。現在の金額は、初回実装、確認対応、修正1回、リリース前確認までを含めた前提です。

そのため、金額を合わせる場合は、今回は初回実装と確認対応までに絞り、追加修正とリリース後対応は別途見積りに分けたいです。

ご予算を優先するか、納期と対応範囲を優先するか、社内で確認いただけますか。

この文面をそのまま使う必要はない。大事なのは順番だ。相手の事情を受け止める。今の価格に何が入っているかを書く。金額を合わせるなら何を外すかを書く。最後に、相手に確認してもらう。

価格交渉が毎回苦しくなる人は、見積りの切り方価格の中身を分ける考え方 も合わせて見てほしい。代替提案は、急に話し上手になるためのものではない。自分の仕事の中身を、相手が選べる形に戻すためのものだ。

最後に

見積り額を守って返す、と聞くと、強く言い返す話に見えるかもしれない。でも実際は、かなり地味だ。契約書やメールに何が書かれているかを見る。守る条件を一つ決める。範囲、納期、責任のどれを動かすか決める。返事に残す。

地味だけど、効く。

次に値下げや厳しい条件の相談が来たら、すぐに「無理です」か「分かりました」で返さなくていい。まず一拍置いて、「この金額で何を守り、何を変えるのか」を見る。そこから一案だけ返す。

価格を守ることは、相手を押し返すことではない。見積り額と仕事の中身を、もう一度同じテーブルに戻すことだ。 ここができると、返事を書く時の怖さは少し軽くなる。

参考にした情報

運営と監修

運営: ValueGate / 監修・相談窓口: ゆーちゃん

記事では再利用できる構造を言語化し、個別判断が必要な場合は無料診断で次アクションを整理する役割分担にしています。

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