案件の選び方 公開: 2026/3/31 更新: 2026/8/27

同じ仕事をしている人の単価を聞いた。帰り道、自分だけが安く見えた

隣で同じ障害対応をしている人と、月額が20万円近く違った。自分の実力だけを疑って仕事を増やす前に、契約と評価が届く経路を見直したい。

雨上がりの早朝ホームで同じ仕事をする人との単価差を知り、通勤客の中で立ち尽くすフリーランス
ValueGate Blog

同じ仕事をしている人の単価を聞いた。帰り道、自分だけが安く見えた

「月82万円。そっちも同じくらいじゃないの?」

水曜18時25分。物流会社の在庫管理システムを支えていたエンジニアは、障害対応を終えた帰りに、隣のチームのフリーランスからそう聞かれた。

二人は同じ会議に出て、同じAPIを触り、夜間の障害でも一緒に原因を追っている。経験年数も大きくは違わない。けれど、自分の月額は63万円だった。

「自分はまだ、そこまでじゃないから」と笑って返した。相手が悪いわけではないし、その場を気まずくしたくなかったからだ。

駅へ向かう間、胸の中には別の言葉が残った。

同じ仕事に見えたのは、自分だけだったのか。知らないところで、評価に値しない動きをしていたのか。

悔しいのに、誰かへ確認するのは怖い。紹介会社へ聞いて「その金額が妥当です」と言われたら、実力不足が確定する気がした。翌朝、エンジニアは単価の話をしないまま、頼まれていた運用手順書まで引き受けた。仕事を増やせば差を埋められると思ったからだ。

その週は、問い合わせが来るたび先に返し、会議が終わるたび自分から議事録を作った。普段なら相談する作業も、評価を落としたくなくて一人で抱えた。金曜の夜、手順書を直しながら、同僚の82万円が何度も頭へ戻ってきた。追いつこうとしているのに、何をすれば追いつけるのかは分からない。この頑張り方はかなり苦しい😶

でも、単価差を知った直後に仕事を増やしても、差が生まれた理由は分からない。 自分だけを責める前に、契約と評価がどの経路を通っているかを見る必要がある。いわゆる「商流」の確認だ。

この記事の場面は、複数の相談で見た出来事を組み合わせ、業種と金額を変えている。商流を見れば必ず単価が上がる、という話ではない。あの帰り道で自分の価値を決めつけず、次に確認できる事実を増やすための話だ。

「同じ現場にいる」は、「同じ契約でいる」ではない

商流とは、顧客の依頼が、どの会社や個人との契約を通って自分へ届いているか、その流れを指す。

物流会社から開発会社へ発注され、開発会社から人材会社へ業務の一部が委託され、その人材会社とフリーランスが契約している。そんな経路もある。一方、同じ会議にいる別の人は、開発会社と直接契約しているかもしれない。

ここで雑に「間の会社が多いから、その分だけ抜かれている」と決めるのは早い。営業、契約管理、請求、支払いの立て替え、トラブル時の調整を担う会社もある。二人の契約範囲、稼働時間、責任、更新条件が違うこともある。

現場で似た仕事をしていることは、契約条件まで同じだという証明にはならない。 だから比較をやめるのではなく、まず違いを三つに分ける。

  • 自分が誰と契約しているか
  • 契約上、何をどこまで引き受けているか
  • 自分の動きを誰が見て、判断者(継続や条件を決める人)へ伝えるか

エンジニアは、紹介会社の管理画面、業務委託契約書、発注時のメールを開いた。そこに書かれていたのは「バックエンド開発支援」という広い役割と、月額、精算幅、支払日だった。精算幅とは、月の稼働時間が決められた範囲を外れた時に、報酬を増減する条件だ。障害時の切り分け、運用会議の進行、手順書の作成は明記されていない。

次に、同僚との違いを想像で埋めるのをやめた。経験年数、担当機能、夜間対応、契約期間について、本人から聞いてよい範囲だけを比べる。似ていたのは日々の実装と障害対応で、違っていたのは契約期間と、顧客への提案を任される範囲だった。月額20万円の差を説明し切れる材料ではないが、「完全に同じ条件なのに自分だけ安い」という前提は一度ほどけた。

実際の仕事は広がっているのに、契約上の役割は参画時のまま。このずれが見えた時、最初の問いが変わった。

自分は安い人なのか ではなく、増えた仕事は、条件を決める人まで届いているのか だ。

まず確認するのは、相手の請求額ではなく自分の契約

単価差を知ると、「顧客はいくら払っているのか」「紹介会社にいくら残るのか」を聞きたくなる。けれど、相手の契約金額や利益の割合を、こちらがいつでも確認できるとは限らない。守秘義務の対象になっている場合もある。

一方、自分が当事者になっている契約は確認できる。対象となる業務委託では、フリーランス法により、発注者は業務内容、報酬額、支払期日などの取引条件を、書面やメールなどで明示する必要がある。再委託に関する支払期日の例外を使う場合は、再委託であること、元の発注者の名称、元の業務の支払期日も明示事項になる。

ただし、この制度は「最終顧客が払う金額」や「間に入る会社の利益率」まで、フリーランス本人へ一律に開示させるものではない。法律が単価差の理由を説明してくれるわけでもない。

確認する順番は、次の通りになる。

  1. 契約上の事実: 契約相手、業務内容、報酬額、精算条件、支払期日、契約期間
  2. 制度の説明: 対象となる取引条件は書面やメールなどで明示される
  3. 自分が確認すること: 実際に増えた役割、評価を伝える相手、次に条件を見直す時期

同じ法律では、フリーランス側に責任がないのに合意した報酬を後から減らすことや、不当に仕事の内容を変えたり、やり直しをさせたりすることも禁止されている。ただし、「隣の人より安い」という事実だけで、直ちに違反になるわけではない。比較の悔しさと、自分の契約で確認できる問題は分けて扱う。 ここを混ぜない方が、相手にも話を持ち込みやすい。

単価を決める人へ、普段の仕事はどう届いているか

契約を見た次は、評価の経路を追う。

エンジニアの日々の窓口は、物流会社のプロダクトマネージャーだった。だが、契約更新の連絡は紹介会社から来る。紹介会社が開発会社へ実績を伝え、開発会社が物流会社と次の体制を話す。現場で「助かった」と言われても、その言葉が二社を越えて自動的に条件へ反映されるわけではない。

この時、会社名をきれいな図へするだけでは足りない。直近8週間の出来事を、誰が見たかまで並べる。

  • 障害の一次切り分けを4回した。現場担当は見ているが、紹介会社へは伝えていない
  • 運用会議の論点を毎週まとめた。議事録は顧客と開発会社へ共有されている
  • 手順書の作成を頼まれた。まだ契約範囲や金額は確認していない
  • 次の契約更新を誰が判断するか、紹介会社へ聞いたことがない

「一次切り分け」は、障害が起きた時に、影響する利用者、再現条件、直前の変更を先に調べ、担当チームが原因を追える状態にする仕事だ。単にエラー画面を転送したのではない。四回のうち二回は、在庫連携ではなく外部配送サービス側の遅延だと整理し、不要な調査を止めていた。

こうして具体的に書くと、エンジニア自身の見方も変わった。これまでは「みんなが困っていたから手伝っただけ」と考えていた。だが、繰り返し任され、次回も期待されるなら、それは善意の一回ではなく役割になり始めている。回数と相手側で止められた作業まで書くと、紹介会社も顧客へ説明しやすくなる🧾

ここで見えたのは、「価値が途中で消えた」という断定ではなかった。条件を話す相手へ、自分から事実を渡していなかったという、動かせる部分だ。

商流が長くても、担当者が役割を具体的に説明し、顧客の評価を拾ってくれる案件はある。逆に、契約相手が顧客に近くても、仕事が「開発要員一名」としか伝わらなければ、増えた役割は見えにくい。会社の数だけで良し悪しを決めず、誰がどの言葉で自分を説明しているかまで見る。

商流の各位置で何が価値になるかは、同じ仕事でも単価が変わる理由。商流で変わる「価値の見え方」でも整理している。

「マージンはいくらですか」より先に、三つを聞く

エンジニアは紹介会社との面談で、他人の月額を出さなかった。比較から始めると、契約の違いや守秘義務の話で終わる可能性が高いからだ。代わりに、自分の仕事について三つ聞いた。

次回の継続と条件は、どの会社の誰が判断しますか。

今の私の役割は、先方へどのように伝わっていますか。

障害対応と運用整理を次期も持つ場合、いつまでに実績と希望条件を出せばいいですか。

担当者の返答は、「バックエンドの実装担当として伝えている」だった。現場で増えた役割は、紹介会社も把握していなかった。

ここで「そんなに見てくれていなかったのか」と腹が立つこともある。逆に、これまで報告しなかった自分を責めたくもなる。でも、誰のせいかを決めても次の条件は動かない。エンジニアは、障害対応の回数、会議で整理した論点、運用担当から受けたコメントを一枚にまとめた。

単価の根拠を仕事の事実から組み立てる方法は、「単価を上げたい理由は?」と聞かれたら、何も言えなくなったにつながる。

そして、手順書にはその場で「やります」と答えず、こう返した。

現在の契約はバックエンド開発支援となっています。運用手順書を次期も含めるか、作業量と更新条件を紹介会社と確認して、明日15時までに返答します。

断ってはいない。金額を持ち出して相手を責めてもいない。今の契約上の事実と、これから確認することを分けただけだ。即答を止めると、悔しさを追加労働へ変えずに済む。

帰り道に決めた自分の値段を、事実で決め直す

次の更新では、希望額がそのまま通ったわけではなかった。それでも、役割は「バックエンド開発と運用改善支援」へ変わり、月額は7万円上がった。手順書は今の期間の追加作業として一度だけ対応し、次期からは役割に含める合意になった。

更新の連絡を読んだ時、最初に出たのは喜びより安堵だった。82万円には届いていない。それでも、理由の分からない差に追い立てられ、夜まで仕事を足す状態からは戻れた。次に役割が増えた時も、黙って埋める前に契約と評価の経路へ戻ればいい。その逃げ道が見えたことで、肩の力が少し抜けた。

単価差がすべて商流で説明できたわけではない。同僚とは責任範囲も契約期間も違った。それでも、エンジニアは自分を安い人だと決めつけるのをやめられた。差を見た時に確認する順番が分かったからだ🙂

  1. 自分の契約書と発注内容を開く
  2. 増えた仕事を、見ていた人と一緒に書く
  3. 継続と条件を決める人、役割の伝わり方、見直し時期を聞く

次の案件を選ぶ時も、月額や有名企業という表示だけで決めない。誰が優先順位を決めるか、仕様変更はどこで確定するか、自分の提案を誰が評価するかを参画前に聞く。条件のよさに惹かれつつ不安が残る時は、条件はいい。でも、この案件を受けるのがなぜか怖いも判断材料になる。

同じ仕事をする人の単価を聞けば、胸はざわつく。悔しくなるのは自然だ。けれど、その夜の気持ちだけで、自分の値段まで決めなくていい。

単価差を知った日に増やすべきなのは仕事ではなく、契約と評価が届く経路についての事実だ。 事実が一つ増えれば、「もっと頑張ります」以外の返事を選べる。

単価差の理由を、自分の契約から整理する

ページへ移動

参考にした情報

運営と監修

運営: ValueGate / 監修・相談窓口: ゆーちゃん

記事では再利用できる構造を言語化し、個別判断が必要な場合は無料診断で次アクションを整理する役割分担にしています。

関連記事